真空管アンプ製作

真空管アンプの自作記事です

Technics 20A 擬き OTLアンプ「M-20A」(10)

Technics 20A 擬き OTLアンプ「M-20A」(10)

 

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OTLアンプに興味を持つ私として国産の著名アンプを作ってみたいと思うのは自然のことだったと思います。

最初の頃に述べましたが、最初に「LUX MQ36」擬きを製作したのは今から30年ほど前です。

M-20Aは、真空管50H-B26を20本以上の特性をそろったのを手にいれるのは非常に困難で、例えあったとしても非常に高価になります。それで製作を断念していました。しかし、50H-B26のヒーター25V球25HX5があることを知り、あの超円高時代に米国からまとまって安価に購入することができて製作実現する運びになりました。

届いた球を見るとSYLVANIA製とRCA製が半々に入っていましたが、写真に見られるようにSYLVANIA製はMATUSHTA製の様です。

 

製作上の反省とトラブル対策

 

後日にオリジナルT-20Aを修理する機会があり、組み立て配線上にいろいろ工夫されていることが分かりました、それらを交えて反省とトラブル対策を報告します。

写真:配線の様子

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製作上の反省

 主要な点は

①出力管25HX5について、十分な知識もなくいきなり12本パラレルのOTL製作したこと。

 

②モノラルアンプ2台に分けて製作したのは良かったが、4本×3組12本の構成したこと。

 

③主電源回路のケミコン200V1000uFを12個使用したが、このケミコンが性質的音質的にはどうも力不足の様であったこと。

 

④モノラルにして2台に分けたが部品配置等に工夫が足りなかった。

 

⑤配線方法に問題があり、電源やアース線を写真に見られるように平行に配線したこと。

 

詳しく述べると

①25HX5について個別の特性(癖のようなもの)を知るためにシングルアンプやプッシュプルアンプを製作して、その特徴や癖を良くつかんでからするのが普通の手順であったが、いきなり12本OTLはちょっと手落ちであった。

 

②25HX5のヒーター電圧が25Vのため4本直列でAC100Vから点火する必要があり4本×3組、計12本の構成したこと。(オリジナルではヒータ50Vなので10本使用となっている)これが発振リスクの原因になった。発振対策については後にのべます。

 

③ケミコンが音質に与えることはよく知られているが、このケミコン200v1000uFもかなり多数在庫があり、使った実績もあるので大丈夫であろうと思って起用した。また、Rコアトランうの背が低いので長く大きいケミコンを使いにくかったこともある。

 

④M-20Aの現物を見てから気が付いたが、M-20Aでは出力管50HーB25はぎっしり並んでいて、これで放熱が大丈夫かなと思うほどに詰まっている。内部配線もぎっしり詰まっていてほぼ最短距離配線である。CR類は大きいケミコンを除いてほとんどが真空管ソケットピンに配線されている。

M-20Aでは球の間隔は詰めているが、後に述べる発振対策からはもう少し詰める必要があったと考えられる。

 

⑤電源やアース線を写真に見られるように裸線を捩って平行に配線したことは、最初からあるていど予測できていたことであったが、ほかに適当な配線方法が思いつかなかったので、主電源2本、Sg電源2本、バイアス2本、信号2本の計8本を平行に配線した。これは、配線間容量問題があるので、線の順を考えて影響が少ないように配置したが、やはり、その影響が無視できなかった。 

発振対策

このアンプ調整の最大の問題は発振対策でした。発振の原因は出力管を多数並列につないで動作させると、掛け算で真空管の性能が上がり発振することが知られています。

この発振対策として代表的なのは

1、g1に直列に1k~4.7kの抵抗を入れる、しかもこの抵抗はソケットピンに最短のリード線長で付ける

2、水平偏向管などトッププレート球の場合は、プレートキャップの直近に適当なLを入れる。通常このLは1/2w100Ω抵抗にエナメル線を10回ほど巻いたものを付ける。

3、水平偏向管など多極管を三結で使う場合は、PとSg間に100Ωの抵抗を最短で入れ、Sg端子とアース間に1000pF程度のコンデンサーを入れる。

4、プレート側に1~5Ωの抵抗を入れる

5、上記の対策と並行してフェライトビーズを入れる

6、各配線は必要以上に長くしない

7.最後の手段、球数を減らす

 

これらの対策は組立て配線時に処置しておくもので、後から対策するのは困難なこともあります。したがって使用球や回路によって発振対策を施しておく必要があります

 

OTLアンプの場合、特に水平偏向出力管を6本までで使う場合はこれらの対策でおおむね解決できた実績がありますが、8本以上になる場合は、これに加えてさらに細心の注意が必要になります。(SEPP上下で2本組になりますので偶数個になります。)

 

M-20Aでは欲張って12本(SEPP 6パラ)使いにしましたのでさらに発振対策が必要でした、

 

発振現象としては、8本仕様で通常のテスト時には問題ありませんが、それに4本増やして12本で最大出力付近にすると発振してしまいました。発振すると電流計が振り切れますのですぐにわかります、オシロスコープで波形観測していても波形が乱れますのでわかります。

また、AC100V電源を105Vにすると簡単に発振することがわかりました、(わが家では電源電圧が105Vに上がることが多いので100V~105Vに上げて安定に動作するかをテストするようにしている)

配線状態を変えるのは大変なので、結果として取った対策は

主電源電源とSg電源の高域インピーダンスを下げるため、フィルムコン200V2,2uFを要所要所にいれた。現物を見ると計4個付いている。

この対策で12本使用時に105Vにしても発振しない事が確かめられました。

しかし12本では電力も食うので実使用では8本仕様にしましたので、発振の問題は消滅しました。

後にM-20Aを修理したとき発振トラブルは10本仕様で全くありませんでしたので、本家の組立配線は一見雑多のように見えて実に発振対策が取られていたことがわかります。

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以来、発振トラブルは無くなり、安定に働くようになりました。

 

次回は、特性データです。